M国人におそわれる 5





Studentenwerk(学生互助会)では奴が不満気な表情で待っていた。

私が通されたのは、会長の執務室である。そこに私と奴、そして会長の3人が顔を合わせた。 まず口を開いたのは会長だ。
「フラウたこですね?どうぞおかけなさい。話は国際課のフラウBell. から聞いています。ところがですね、こちらの彼は、 自分は何もしてない、と言っているのですよ。」
「うそです!」
私は即行叫んだ。すると奴が、
「冗談じゃない!俺はなーんにもしていない! こんなドイツ語のへたなやつの言うことを真に受けないでくれ!」
などと言う。なんだとー!てめーだって言うほどうまくないくせに!

とにかく奴は私が口を開くたびに茶々をいれてくるのだ。 これでは話が進みやしない。そこで私は作戦を変えることにした。
「すみません・・・私、 彼が同じ部屋にいるだけで恐ろしくて、 体が震えてうまく話せません。彼のいないところで、 会長と二人だけでお話できないでしょうか?」
奴は目をむいて食い下がろうとしたが、会長が、
「わかりました。では貴方は部屋の外で待機していてください。」
と奴を部屋から追い払ってくれた。ちょっと安心のたこ。

「ではフラウたこ、実際おこった出来事を詳しく話してください。」
会長がおっしゃたので、会長に奴の役をやってもらい、 あの夜の出来事を再現した。 やっているうちに再び恐怖がよみがえってきて、少々涙ぐんでしまった。 すると会長はこういってくれた。
「フラウたこ、大変な目にあいましたね。私は貴方を信じますよ。 だって、さもなければ貴方に彼を訴える理由はありませんからね。 安心してください。私たちは貴方の安全のために最善をつくしますよ。」
そして、私を先に寮に帰してくれた。追って報告をしてくれるということだ。

そして数日後、国際課のフラウBell.から呼び出しの電話がはいった。 行ってみると、フラウBell.がやたら愛想良く迎えてくれ、 報告をしてくれた。奴は今回は厳重注意で、 もしもう一度こんなことがあったら、大学をでてってもらうこと。 私には新しい部屋が用意されたこと。そしてフラウBell. の激励の言葉。
「たこ!こんどあいつがきたらげんこつでぶんなぐっちゃえ!」
なんと、敬称でなく親称で呼びかけられてしまったよ。びっくり。 しかも殴る真似まで豪快にしてくれた。

それだけだった。おいおい、裁判は???人がむちゃくちゃ緊張してるというのに!

ゆうきさんにもきいてみた。するとゆうきさんの所にも何の連絡もない、 ということだ。なんだよー!びびるだけびびらせといて!

しばらくしてSp.先生から電話があった。
「あーた、あれはどうなりましたかな?」
経過を説明すると、
「ほう、そうですかな。よかったですなぁ。裁判というのは、 これ、あーた大変ですから、私も止めてくれるようお願いしたよ。」
そうか、先生のお力だったのね。感謝!

その後このM国人とは何もおこっていないが、 別のM国人たちとのトラブルはまだまだ続くのだ(今でも)。








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