■ ドイツ語を学ぶ人達
◆「留学日記」メールマガジンの御案内 ◆


ゲーテに入れなかったけど、「ドイツ語読解講座」 という新しい所に入るのには、わくわくした。


いったいどんな人達がくるんだろう?私みたいに ドイツ留学を目指す人達かな???

…この期待感は教室に入って速攻打ち砕かれた…

そこにいるのは、有閑マダム風の人達、もうリタイア したか、どこかの知識人風な年輩の男の人達、年上の 院生っぽい人達で、なんだか私は一人浮きまくっていた。

講師は某有名国立大学の独文の先生。ドイツ語の ショートストーリーをみんなで翻訳して読む。 先生が穏やかに難しい表現に付いては解説をし、 当てられた人は文章を朗読して訳を言うのだ。 大学の原書購読の授業と似ていたけど、決定的に 違うのは、受講者が教養人で、様々な質問を するところだ。なんだか私は肩身がせまく感じてしまった。

しかし、朗読だけは私は上手だった。先生に毎回褒めて もらえて、それだけが私のそこでの存在価値。

(比較的)若い男性の受講者達は、こういっちゃなんだが、 皆一癖ある人達ばかりだ。その中でも、Iさん(仮名)は ちょっと忘れられない人だった。

私はその頃レース編みに凝っていた。授業が始まる前の 待ち時間にはソファーに座って、よくレースを編んでいた。 編み始めはまだ、縮れてるようにみえるのだけど、そこで 彼が一言。

「そのレースがそのような形態になるのは、構造上の必然 なのでしょうか、それとも貴方の技術の未熟さゆえなのですか?」

むかっ!!!
なんかその言い方むかつくんじゃ!!!

ある時授業中に地震があった。先生が、
「ゆれは収まったようですね。」
と言ったとたん大声で叫ぶIさん。

「いえ!まだです!今のはP波ですからこれからS波が 来るはずです!S波が!」

…し〜ん…

「みなさん!そうでしょう?今のはP波でしょう?」

…し〜ん…

彼は困ったようにきょろきょろあたりを見まわした。 そして目をこれ以上ないくらいに大きくして、

「そうですよね!たこさん?」

なーんーでーそーこーでーわーたーしーにーふーるー!!!

「…そうですね、むかし高校で習った気がしますね。」
というと彼は満足げに授業に再び集中した。

しかし、一番理解できないのは彼のドイツ語を習う理由だ。 私が「ドイツ語会話を習いたい」と言った時の彼の反応は こうである。

「会話なんて習って何になるんですか?だって考えてみて くださいよ。もし全人類が滅亡して(←おい!)あなた 一人が生き残ったとしますよ。会話なんて全く役に立たない じゃないですか。でも、ドイツ語の本がそこにあったら どうなると思います?その時ドイツ語ができたらその本を 読む事ができるのですよ!私はそのためにドイツ語を 勉強してるのです。」

…あなたは非現実的世界に生きてらっしゃるのね…

彼は私がドイツ文化センターで出会った最初の 「個性的な」人だった。でも、実は後から後から 「個性的な」人にここで出会うのだった。