■ ドイツの大学とは | |
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では、大学(Universitaet)への留学について考えてみよう。
まず、ドイツの大学がどのようなものなのか簡単に説明させてほしい。
というのも、日本やアメリカとはシステムが違うため、
いろいろな誤解を生むことがあるからだ。 ドイツの大学はほとんどが国立の大学で、 大学間に日本のようなレベルの格差はない(というのが建前)。だから、「ドイツのどの大学が有名なんですか?」 という質問が各大学の「総合的レベル」について聞いているのなら、 答えは「みんな一緒です」だ。 古くからあって有名な大学というなら、 ハイデルベルク、マールブルク、テュービンゲンの3大学があげられる。 とはいえ、ドイツの雑誌で大学ランキングというものが存在するのも事実だ。でも、それは日本のような偏差値ランキングではなく、あくまでも「勉強する環境」のランキングなのだ。教授一人に対する学生の人数とか、学生の満足度とかが判断基準になる。 ただし、学科レベルにおいてなら別の話だ。 「この大学のこの学科、この教授」ということなら格差は存在する。 ドイツでは、高校(Gymnasium)に卒業試験(Abitur)があり、合格と同時に、 すべての大学への入学資格を取得するので、 大学に入るのに入試は行われない。 しかしながら、どこの学科にも自由に入れるわけではなく、 希望者の多い学科はAbiturの成績によって入学時期が決まる。 時には何年も待たなければならないことだってあるのだ。 待っている間に他の専攻を学ぶ人もいる。 ゼメスター制で(1ゼメスターは半年)、 春と秋の年2回入学することが出来、学位取得をもって卒業となるが、 その期間はひとによってまちまちだ。 注:2008年冬学期よりドイツの大学制度は大きく変わった。以前のようなのんびりしたカリキュラムではなくなった。 2008年度冬学期より、全ての大学で「B.A.コース(日本でいうところの学士コース)」の導入が義務付けられた。このことにより従来のMagisterコースやDiplomコースは姿を消すことになる。2008年夏学期以降のMagister過程入学はできなくなった。また、これから徐々にアメリカ式の学期に移るようだ(つまり9月から12月、3月から6月のゼメスター)。 B.A.過程は3年または4年で卒業でき、その後にMasterコースに進むことができる。 つまりは日本のようなシステムに変更になったというわけだ。 確かに今までのシステムでは卒業に10年以上かかる人(というかいつまでも学生やってる人)が多すぎた。アメリカに優秀な人材が流出している現状を踏まえて、 国際競争力を高める為にこのシステム改編がなされることになったのだ。 このことにより、「大学院留学」も可能になったといえよう。 私の勤務するボン大学には「日独翻訳マスターコース」があるが、 日本の大学のように入試を行うようになった。 また、外国人にはさらに高レベルのドイツ語力の証明が必要となった。 他の学科の事は正直分からないが、日本と同じように入試を行うところも増えてくるのではないだろうか。 以前は無料だった学費についても、最近では有料となるケースが多くなってきている。 有料といっても一学期500ユーロ程度という、日本から比べれば格安の値段だ。 これに上乗せして「外国人手数料」なるものを300ユーロ取るような私の勤務先のような大学もあるが、 ごく少数派である。 また、教育は州レベルでの行政になっているため、州の与党が変われば授業料も変わる場合がある。 最近の例でいえば、授業料として600ユーロとっていた州が、政権交代で無料になった例もある。 注:ここより下は2008年度以前のシステムの説明である。一応残しておくが、現在の留学には通用しないシステムだ。 日本のように皆がいっせいにそろって卒業ということはない。 ドイツ人の卒業までかかる平均年数は6年半である。 最初に取れる学位は人文系でMagister、 自然科学系でDiplomであることが多く、 これは日本の修士号に相当 (あるいはもう少し)するものである。 つまりドイツの大学は、 日本の学部と修士課程を合わせたようなものなのだ (※注:最近はBA(=Bachelor)という日本の大学の学士号に相当する 課程も多く設立されている)。だから、日本の学部卒の人が、 「ドイツの院に留学したいんです」と言ったって、 ドイツでは大学の普通のコースにしか入れない。良くて中途編入、 悪いと日本の単位はまったく認められず、一からやり直しである。 Magisterは副専攻を必要とする、幅広い知識を求められるもの、 Diplomは一つの専門で深い知識を求められるものであり、 同じ学科でこの両方のコースがある場合もある。 その場合は大抵の人はDiplomコースを選ぶようだ。 4ゼメスター(2年)をすぎるころに 中間試験(ZwischenpruefungまたはVordiplom)があり、 8ゼメスター終了してから卒業試験を受けることができる。 この卒業試験、生涯に2度しか受けることができないので、 みな必死になって勉強する。 学生は大抵主専攻1つと副専攻2つ、 もしくは主専攻2つをとり、 それぞれの専攻で中間、 卒業試験をうけることとなるのだ。 MA(=Magister)やDiplomをとった後にさらに勉強したいなら、 博士課程(Promotion)に進む。ここで博士号(Dr.)をとった後に、 さらに教授資格取得過程(Habilitation)があり、 ここで最終的に教授(Professor)の称号を得ることになる。 この資格が無いと大学の教授にはなれない(あっても絶対なれるわけではない)。 学費はいまのところ無料のところが多く、 1ゼメスターに150ユーロ程度(2万円ぐらい)の学生会費を払う。 これには大抵市内交通の料金も含まれているので、 バスや電車が乗り放題になる(私の大学では、かなり広範囲をカバーしていて、 特急で1時間半ぐらいかかるほどの範囲までただでのれる)。 しかし、現在学費導入の動きがドイツ全国で起こっており、 すでに学費導入を決めているところもある (といっても日本から比べたらむちゃくちゃ安い)。 |