カラオケアーベント


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うちの学生寮のバーで、
カラオケ大会が行なわれた。

バーはもう動けないほど超満員! 私も、ドイツ人がどうやってカラオケを楽しむのか見たくて、 バーに行った。

地下への階段を降りる前に、もう歌声が 聞こえて来ている。 いや、歌声というより、怒鳴り声だ。 バーにはいると、ドイツ人 の男の人が、もうがんがんに頭をふりながら、 声を張りあげている。既に歌と呼べる代物ではないぞ、これ。 でも周りの観客はノリノリで、凄い歓声をあげている。 歌が超へたなのは誰も気にしていないようだ。 ライターの火を左右にゆらしている人もいる。 最後の方は全員で大合唱になった。

その人が歌い終るとしばらく間があいた。 みんな恥ずかしがって、前に出てこないのだ。 でも、司会の人が
「歌った人にはただでビールが出ます!」
というと何人かが名乗りをあげた。みんな「ただ」にはかてないのね。 そしてドイツの過去のヒット曲が何曲か続いた。
「よし、それではここらで私も日本人として歌わねばなるまい」
そう思って曲の リストを見せてもらった。。。しかし、 知らない曲ばかり!しかも英語の曲ばかり! こんなん歌えるかい!

しかし、そうは問屋が卸さない。 友達が、たこは日本人だからカラオケを 歌わなければダメ!とはやしたてたのだ。 私は、「あなたが歌ったら歌うよ」、と誤魔化したのだが、 そしたら本当に友達は、O.K.といって、前に 出て行ってしまった。恥ずかしいから 歌わないだろうとふんだ私の読みははずれてしまったのだ。 友達は女の子とも思えぬ、ワイルドな歌を歌い、
「さて!次はたこでーす!」
などと言うものだから、 私はしぶしぶ、唯一歌えそうな、 "My Fair Lady"を歌うことにした。

前に立つと、"Nagano!Japan!Hyo-"という掛け声が あがり、もう逃げられない状態。。。 そして、曲が始まった。。。。が、やはり 英語では声がでない。。。
「たこ!一緒に歌ってあげるからがんばって!」
といわれ、全員での大合唱が始まった。でも、 肝心の私は歌えないので、だんだん恥ずかしくなって きた。

そこで、私は開き直ったのだ。おもむろにテレビの歌詞から目を離し、 観客のほうに向かって、
「おどりあーかそう、ひとばんーじゅーうー、 ゆーめーみごーこーちー!」
と、日本語の歌詞で歌い始めた。 すると、今まで一緒に歌っていた人も、しーんと なり、私一人だけの歌声がバーに響いた。 あまりにしーんとしているので、私も不安になり、
(どうしたんだろう?日本語でしらけたのかしら? 急に声量が変わったので、びっくりしているのかしら?)
と、思いを巡らしたのだが、2番を歌い終わると、 ものすごい歓声が沸き起こった!
「Bravo! Super!」
調子にのった私は、続けて3番も日本語で歌った。 歌い終わると、ものすごい拍手と、
「Zugabe! Zugabe!」
という、アンコールを求める声! 私は恥ずかしくなって、すみっこに引っ込んで しまった。

とにかく、これで日本人としての義務ははたした、 と思って、お手洗いに行ったら、その間に勝手に コンテストの出場者にエントリーされてしまっていた! そして、ひとりの男の人がきて、
「たこが歌っているときに、僕が花をわたすから、 そしたらたこは、僕と手をとっておどるんだよ!」
と、演出まで用意されていたのだ。 なんだかあとには引けないようだ。。。

こうなったらうたってやる!

コンテストの時間になると、さらにたくさんの 人がやって来て、もう私はどきどきだ。 でも、ほかの出場者が特に上手いわけでもないので、 自信を持って歌うことにした。同じ曲だ。 (というかそれしか知らない) まず日本語で1番を歌った。ライターの光が ゆれている。 そして、2番は英語にしてみた。
「I could have danced all night~」
さきほどの男の子が花を持ってやってくる。 ひざまずいて花をわたすので、手を取って 踊るふりをした。すると、ひとりの 女の子が出て来て、
「たこは歌い続けて!私が彼と踊るから!」
というので、私は椅子の上にのぼり、歌い続けた。 そして3番はまた日本語。やはりこの方が歌いやすい。

歌い終わると、また大歓声!
「Erster Preis! Erster Preis!」
さっきの男の子が私を持ち上げたので、 拍手がおこった。

そして、賞の発表の時間だ。 まず、一番へただった人に賞品が贈られ、 3位、2位、と発表された。 そしていよいよ1位の発表!途端に ものすごいたこコールがはじまった。
「Ta ko! Ta ko!」
聞いているこっちが恥ずかしくなる。。。

そして。。。私は優勝したのだ!

賞品は、シャンパンと商品券! アンコールでもう一度うたって、席に帰ると、おめでとうのキスの嵐。 シャンペンをその場で開けて、みんなに ごちそうした。

カラオケが終わっても、みんな興奮冷めやらず、 ア、カペラで歌う人が続出。必ず曲の最後には 大合唱になるので、夜中だというのにうるさいうるさい。

私はそこで、部屋に帰ったのだが、 そのあとも、バーを締め出されてなお外で大合唱するドイツ人で大騒ぎだった。

ドイツ人のカラオケは、日本とだいぶ違ったが、 とっても楽しかった。 こんなにうけるんだから、もっとカラオケ ドイツではやってもいいのになー。