一次の発表の数日後に面接試験は行われた。6名のグループで行われる。 どんな内容なのか・・・どうやらグループ討論らしいのだが・・・ 当日指定された時間に大学に行った。教室は重要文化財にも指定されている、 鐘楼のある建物だ。床は木造なので歩くたびにぎしぎし鳴り、 このレトロ感がまた緊張感を煽る。教室の前に置いてある、 待ち合いの椅子にはすでに何人か腰掛けていた。 この人達と一緒に面接を受けるのか。知り合いは一人もいない。 口をきくものはなく、ドアの向こうから聞こえてくる、 ぼそぼそという声だけがあたりを支配していた。 そして、前のグループが終わり、私たちは教室に案内された。 コの字型におかれた机の周りに、 6人の先生方が囲むようにしてすわっている。 もちろんSp教授もどんとかまえている。 比較的若い男の先生が立ち上がり、面接の説明をはじめた。 ところが・・・いきなりドイツ語! うそ〜ん! しばらく先生はドイツ語で話し続け、 みんなが目を白黒させているのを確かめてから、 ふふふと茶目っ気たっぷりに笑って、 「ま、ドイツ語でおどろかすのはこれくらいにしましょうか。 では課題を出します。みなさんでこのテーマについて話し合ってください。」 と言った。おどかすなよぉ、先生! そしてつかつかと黒板に歩み寄り、「大学生活とアルバイト」 と大きく書いた。 「じゃ、どうぞ。」 え?もう? いきなりなので何をどうしていいかわからず、 みんなシーンとしている。だまっていてもしょうがないので、 ここは私が仕切ってしまいましょう! ・・・・ ま、内容は20歳の若造が思い付くような内容と思ってほしい。 話し合いの中で、H氏と野間さん(仮名)が印象に残った。 H氏は何というか・・・唯一の男性で、少し皆より年上の人で、 そのせいか・・・かなり熱くなっていらっしゃった。 野間さんは終始不安げに周りをみている人だった。 話し合いが終わると、今度は先ほどの先生が個別に質問をしてくる。 選抜試験の申し込みの際に提出した作文をぱらぱらとめくりつつ、 「おや、たこさんは文法が苦手なのですか。それは困りますねえ。」 ぎくっ、余計な事書くんじゃなかった。それに対して何と答えたのか、 もう自分でも覚えていないが、早口でまくしたてたような気がする。 H氏は先ほどに続いて、非常に個性的な意見をのべておられる。 とにかく自信満々だ。野間さんはやはり、不安げに答えている。 ・・・そして面接はおわった。意外にSp先生はおとなしかったな。 帰り際、私は思い切って野間さんに声をかけてみた。 「ねえ、よかったら一緒にケーキ食べに行かへん?」 野間さんは、恥ずかしそうにうなずき、 私たちは大学のちかくにある、小さくてかわいいケーキ屋さんで、 ブルーベリーのタルトを食べる事にした。 「ねえ、さっきの面接どう思う?」 そう私がきいたら、 「どうって・・・私はきっと落ちるから・・・。」 そんな今から弱気にならんくても・・・ 彼女が神学部であること、 共通の知り合いがいることなど、しばらくたわいもない事をはなし、 そろそろ帰る事にした。すると野間さんは手帳をとりだし、 「んー、どうしようかな・・・でも・・・きっと落ちるしな・・・。」 はっきりしない彼女にちょっといらいらした私は、 「何、何???」 と続きを促した。 「えー、住所もらおうかと思ったけど、落ちたら恥ずかしいし・・・ やっぱりいいわ。」 帰る方向が反対なので、彼女とはケーキ屋の前で別れた。 しかし、何というか・・・内気すぎないかい、彼女? ・・・それが大きな大きな誤解である事が判明するのは、 まだまだ先のことであった・・・ |