・・・と思ったらほとんど文法の授業だった。先生は女性で年の頃はやはり50代前半か。 まずは発音の練習から。ウムラウトは難しい・・・しかしそれよりもRとLでございますよ。 「皆さん、Rはのどひこを震わせるのですよ!」 そう教えてくれるのはいいけど「のどひこ」とは何ぞや???(いまだにわからん) 先生はIとEの発音の区別にもやたらやかましかった。 「いいですか?IはEよりも口を横に広げるのですよ!イー!イー!」 (確かにこれは大事である。ドイツ人に聞き間違われることがしょっちゅうだ) 先生がIの発音をするまえに一息ついて気合いをいれてるのが私にはやたらおかしい。 その日一日は発音で終わったのだが、授業の最後に先生の爆弾がおとされたのだ。 「私の授業では、必ず毎時間小テストをします。当然成績にもはいります。 だから皆さん頑張って復習してきてくださいね!」 えーっマジかいなー!?毎時間? もしかして私はとてつもなくしんどい先生の組み合わせに当たったんじゃ??? だって他のクラスの皆はなめなめでいけてるぞ! 先生はとにかく熱心だった。スカートの前後ろ逆に履いているのにも気付かないほど。 文法はとにかく詳しい! 本来の文法の授業より詳しいぐらいだ。自然こちらも熱がはいってくる。 あるとき先生と一緒のバスになった。 「あら?貴方は・・・いつも一番前の真ん中で授業を受けている人ですね?」 「はい、そうです。ドイツに留学したいんです!だからがんばって勉強してます。」 「まあ、それはそれは・・・ 頑張って下さい。ただし、 あなたおっちょこちょいなミスが多いですよ!文法を正しく答えたのはいいけど、 訳を書くの忘れないで下さいね・・・」 ぎくっ。痛いところをつかれてしまった。確かにテスト中に「貴方、訳し忘れてますよ」 と指摘されることが多かったのだ。気をつけよう。 1年間本当にテストの無い週は無かった。 しかも出題内容が実に細かいのだ。当然ながら受講者はどんどん減っていく。 だけど私には目標が有るのだ。これくらいで参っているわけにはいかない。 ある時期から隣の席のFさんが、 私にいつもテストの範囲でわからない所を質問するようになった。彼女はいつも言う。 「たこさんは本当に熱心やねえ。私はよーわからへんねん。教えてなー」 私はいつしか彼女の先生のような気分になっていた。 彼女より私のほうができて当たり前と思うようになっていた。 しかし実は後に落とし穴が待ち構えているのである。 |