とにかくアンゲラが怒らない日はないのだ。 予習をしていかないとカミナリが落ちる。 間違えるとさもいまいましそうに、 「ああ、もう!チッ!」と舌打ちされる。 正しい答えを言うまで、「違うよ!お嬢さん!なぜわからない!」 攻撃がくる。こんな授業にたえられるわけもなく、 一人、二人あるいは一気に5人と脱落していき、 なんと! 最終的には私とひとつ上の学年の男の人の二人だけになってしまったのである。 この授業は自由科目なので、卒業単位にははいらない。 やめてしまってもなんの支障もない。 だから私はとても気楽に「ただで受けられる会話教室」 のつもりでかよっていて、行きたくない日はさぼっていたのだ。 そんなことを続けていたら、ついにアンゲラはぶちぎれて怒鳴った! 「お嬢さん!あなたはいつも来たり来なかったり、 はっきりいって私は気分が悪いね! 来るなら来るで毎週きなさい! 来ないなら来週からずっと来ないようにしなさい! 今日の授業の終わりまでに決めなさい!!!」 うひゃあ! はっきりいってやめようかと思った。 こんな辛い授業になんてでたくない! でも、「やめます」とアンゲラに言うのもこわかったし、 唯一のネイティヴとの会話の機会をなくしたくない!(たとえそれがアンゲラであっても) 授業の最後にアンゲラはきいてきた。 「それでどうするね、お嬢さん?」 思わず反射的に答えてしまった。 「き、きますきます!毎週きます!」 言った瞬間後悔したが、もう取り消せない。 こうなったら真っ向からアンゲラに挑戦するしかない!!! それからの私は人がかわったように真面目に予習した。 アンゲラの前の時間が英語の時間だったので、 その時間はいつもドイツ語の内職をしていた。 慣れてくると、アンゲラの「チッ」攻撃も何ともなくなるものだ。 もう一人の受講者の人は、ゲーテにかよっていてドイツ語も上手く、 アンゲラとも何故か和気あいあいとしていて、 なんだか私は一人だけ邪魔者のような気分だった。 あるとき趣味は何か?という話題になって、彼は「料理」 と答えた。するとアンゲラは目をかがやかせて、 「じゃあ、貴方今度ここに料理もってきてください。 みんなでたべましょう。」 すると彼はすぐさまこう言った。 「やだ!ぼくチャン の美味しい料理は人にたべさせない! 勿体ないから一人で食べるもん!!!」 .......聞き間違いではないよね? 私は後半年もこの2人とドイツ語の練習をしなければならないのか....... |